るびべん です。本職での登場です(笑)。 [dev]からの話ですが、ライセンスものですので、こちらに。 [ruby-dev:16325][ruby-dev:16336][ruby-dev:16340]あたりで、Oni Guruma の ライセンスについてまつもとさんと小迫さんが意見交換されました。 この件で、何かお手伝いすることがあるか両者におたずねしたところ、 まつもとさんは、「私については(尾崎さんに教育されて?)、信頼ベースでいこ うと思っています」とのご回答でした(^^;; #もちろん、賛成です。 小迫さんも特に現状問題ないとのことでしたが、権利関係とかよくご存じないの で整理だけしといてほしいとのお申し出でした。 ので、ごく雑ぱくに整理だけしておきます。 === まず、oniguruma モジュールに関しては、小迫さんがソースを書いた時点で小迫 さんに著作権が発生しています。登録とか(C)マークとかは不要です。これは、 我が国が無方式主義をとっていることによります(著作権法51条1項)。 著作権は、小迫さんの死後50年間まで保護されます(同条2項)。 小迫さんは、著作権者ですから、「このライブラリは誰にも利用させない」と権 利主張できます。これが著作権の権利行使の基本形です。 利用というのは、複製する(21条)とか、WEB上に送信可能な状態にしてアッ プすること(23条)をいいます。そのほか、 「改変してはいけない」と権利主張できます(人格権といいます;20条)。 これでは、不便でしょうがないですから、まつもとさんが「使わせて」と申し出 たわけです。利用許諾の申請です。小迫さんは無条件に断ることもできます(で きました)。 申し出の内容を整理しますと、 まず、まつもとさんが複製できなければ仕方がないですから、複製権の許諾が必 要です。それから、コンパイルする必要があるので、翻案権を許諾します。さら に、バグがあったら改変を許す、との許諾もします(この許諾が必要かどうかは 争いあるところです。バグ修復は複製物所有者の権利ともいえるからです20条 2項3号の論点)。 また、WEBで公開する必要があるので、公衆送信権の許諾も必要です。 小迫さんは、これらを包括して、まつもとさんに承諾した訳ですね。 さて、ここからが問題※で、専門家でも十分研究されていない領域に入る訳です が、まつもとさんは、Rubyのソースを一定のライセンスで第三者が利用すること を認めています。 小迫さんのモジュールをマージして共有著作物となりますと(この点も争いがあ ります)小迫さんの合意がないと利用許諾できなくなります(65条1項)。 Rubyにおける正規表現モジュールの重要性からすると共有著作物となると(るび べんは)思います。 #小迫さんのライブラリを別ソフトと考えても、少なくともその部分は、 #小迫さんの利用許諾がないと誰も利用できないことになります。 それを「同じライセンス条件で(第三者にも)許諾してあげて」との依頼があっ た訳ですね。 これに対して了解の意思表示をした訳です。合理的に解釈すれば「Rubyとバンド ルされて配布されるoniguruma モジュール は、Ruby ライセンス条件に従う限り 利用許諾する」との意思表示をしたとなります(Rubyコミュニティでの通常の利 用方法に従う限り、小迫さんは、その利用者を訴えたりしない、ということです ね←厳密な表現ではないですが)。 また、明確に、「小迫さんが独自に配布するときにいかなるライセンス条件で配 布しても良い」と両者間で合意されていますし、それ自体がMLで流れて公表さ れていますから、「Ruby とバンドルされずに(将来)配布されるときのライセ ンス条件は未定であり、全部小迫さんに留保されている」ということになります。 ※問題というのは、小迫さんが(将来)より厳しいライセンス条件で配布しよう としたときに、Ruby ライセンスで、事実上 oniguruma モジュールを改変したも のを小迫さんの知らない(読めない)形で配布した場合の権利関係がどうなるか は、かなりややこしいです。研究的には整理できますが、むしろ、コミュニティ の大勢にゆだねるという考えの下で、対抗言論によってフェアネスを主張しあう べきだというのが私の考えです(というのがDMで書いた内容の意味で、まつも とさんも原則賛成とのことです>小迫さん)。 るびべん@弁護士モード(^^;; huu--